楠木立成(ロス・リアセイ)さん
1960年、プノンペン生まれ/神奈川県在住
1981年、市警で働いていたリアセイは結婚し、ふたりの娘を授かった。まだ娘たちは幼かったため、難民キャンプへ逃げることは辛い決断だった。
1985 年、リアセイは難⺠キャンプへ案内するブローカーへ渡す金を得るために、テープレコーダー、妻のゴールドのイヤリングといったいくつかの物をこっそり売り、妻とまだ幼かったふたりの娘を置いて密かに逃亡した。ボロボロの服に身を包み、バッタンバン州へ向かう列車にブローカーと乗り込んだ。次に車でスヴァイへ行き、徒歩で移動を続けた。
クメール・ルージュ軍とベトナム軍から逃げながら、ダンレク山脈を目指した。多くの困難を乗り越えて、彼はキャンプ07に到着した。母と兄に会った。このキャンプでは女性にのみ食糧等の配給を行っていたので、そのことは一家を苦しめた。彼の母には息子が3人もいたからである。
配給を受けるために彼の弟は女性のふりをした。運悪く弟は時々捕まっては殴られ、虐待を受けた。リアセイは読書が好きで、プノンペンから難⺠キャンプへ逃亡する時、3冊の本を持ってきた。『カンボジアの文明』、『カンボジアの伝統的な遊び』、そして『カンボジア詩の創作法』である。退屈な時に読むつもりだった。