中原円(ソック・クーン)さん
1971年、バッタンバン生まれ/神奈川県在住

このゴールドのピアスは、彼女の母の形見で、生前はいつも身に着けていた。これを着けている彼女の母を、日本人は少数民族の出身だと思った。カンボジアでは、娘が幼い時から耳にピアスを着ける習慣がある。彼女の母も彼女が小さい時にピアスをつけてくれた。彼女がピアスをして日本の学校に通うと、それが問題となった。女子児童がピアスをして学校に来ることは校則で禁止されていた。

彼女の母が亡くなって、子どもたちはこのピアスを皆で形見分けをすることにした。一部は日本で、一部はカナダで暮らす彼女のきょうだいで分け合った。

彼らが分けた理由は金銭的な価値からではなかった。そのピアスが自分を守ってくれるものであり、まるで母がいつも一緒にいて暖かく見守ってくれていると感じられるからだった。母親が身に着けていたものであることに、その本質的な価値があった。

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