④「 夏秋豊楽図 」

次にご覧いただくのは、平安の間「 夏秋豊楽図 」です。先ほどご覧いただいた「稲穂に雀図」より前、2012年に描いた作品になります。ここでは、野菜や果物たちが光を浴びて、豊かに育つ、瑞々しいシーンを描きました。

葉や茎の間を覗いてみてください。あちらこちらに、虫や鳥たちが隠れています。


平安の間は、お茶室としても使われる場所。ですので、お茶席に招く人と訪れる人の関係性や、おもてなしの心、時間の移り変わりを襖絵に表しました。

茶室に招かれたお客様がお茶を味わい、豊かな時間を過ごすように、たわわな果物や野菜たちが実る中で、虫や鳥たちも喉を潤す。そして「ごちそうさま」と、シジュウカラは庭の方へと向かって、飛びたってゆく。そのようなイメージで描いています。

ここの襖絵の景色は、手前から奥の床の間の方へ向かって、梅雨の時期から夏、秋の景色へと、季節が移り変わります。

手前の小さな襖絵をご覧ください。牡丹が枯れゆく姿に、満開の紫陽花の花。セミは抜け殻から這い出てきて、命を生きようとする。同じ梅雨の季節であっても、さまざまな生き物が三者三様で姿を変えていく。

それは、赤ちゃんが産声を上げることもあれば、歳を重ねていく人もいるという、私たちの世界と同じこと。生まれたての純粋さ、満開の花の華やかさ、枯れゆく花の尊さ、それぞれの時間ならではの美しさを表現しました。


そして、この場所が長きにわたって在り続け、人々の時間を温かく迎えられますように。そんな想いも込めた作品になっています。

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