兄:オリーブの起源はさかのぼること約8000年前。地中海沿岸に自生していたといわれています。やがて古代ギリシャで栽培がはじまるわけですが、そのころオリーブは「エライア」と呼ばれていました。どういう意味かといえば「オイル」です。そのオイルは生活や宗教儀式で身を清めるのに使われました。
弟:もうひとつ、オリーブオイルはランプの火として使われるようになり、人々に光をもたらしたことから、神様が存在することの印だとされたといわれています。
兄:だからこそ、オリーブは生命の象徴となり、古代オリンピックで優勝者にオリーブの冠が贈られたり、ノアの方舟の神話では鳩がオリーブの枝を加えて戻ってきたことで洪水が収まり、世界の平穏が訪れたことを知ったりします。そうして平和や豊穣、再生の象徴とされるようになっていきます。それからオリーブオイルは医薬品、化粧品、料理など、生活のあらゆる分野で人々のそばにいる存在になっていきます。
弟:そんなオリーブが日本にはじめてやってきたのは400年前。ポルトガルの宣教師によってもたらされたといわれています。それから明治になると国産のオリーブオイルをつくろうという機運が高まります。三重、鹿児島、そして小豆島で試験栽培がはじまったのですが、ここ小豆島でのみ成功しました。みなさんはどうして小豆島に適応したと思いますか?
兄:乾燥した地域の植物だったオリーブは湿度を嫌います。でも、ちょうどオリーブの花が咲く5月から6月にかけては、日本ではちょうど梅雨の季節に重なって受粉の時期にジメジメした日が続きます。すると、せっかく受粉してできた小さな実が腐って、落ちてしまうんですね。
弟:地中海ではオリーブの花が咲く頃は乾季だから逆だよね。雨が降るとそもそも花粉が飛ばないから、受粉もしづらいし。
兄:そう、でも小豆島は水不足に悩まされているぐらい雨が少ない。それがオリーブにとってはよかったのかもしれないね。それに、当時の小豆島の人たちのたゆまぬ努力が実を結んだとも言えます。台風で木が倒れたり、害虫に悩まされたりしながらも、この島で模索しながらオリーブの生産量を徐々に増やしていき、オリーブは小豆島の名産品として広く知られるようになりました。
弟:小豆島ではオリーブの実をひとつひとつ手摘みしています。だから小豆島のオリーブオイルは香りや品質がよく、一味違ったものになっています。その味わいを堪能できるのは小豆島産オリーブオイルをふんだんに使用したドレッシング。それにエキストラバージンオイルを使った美容オイルなどの化粧品もその上品な香りが人気です。
兄:また、オリーブの実を日本風の浅漬けにした「新漬けオリーブ」や、オリーブ果汁を使ったサイダー、オリーブの搾り果実で育てたオリーブ牛など、小豆島では、様々な形でオリーブを存分に堪能できます。小豆島のオリーブは、日本を代表するオリーブ。世界に対してオリーブが持つ素晴らしさを知ってもらえたら嬉しいです。
弟:オリーブの森で滞在したことをきっかけに、ふだんの暮らしの中でオリーブを見かけたり、オリーブの香りを嗅いだ時に、ふと、瀬戸内海という小さな地中海を思い出してもらえたら、そんなに嬉しいことはありません。
兄:この先には樹齢千年のオリーヴ大樹が待っています。建物を出て千年オリーブとの対面をお楽しみください。