兄:樹齢千年のオリーブの木。この大樹と向かい合ったとき、みなさんはどんなことを感じるでしょうか。千年の長き月日にわたり幹の中を流れてきた水の音や、葉と葉のあいだをそよいでいった風、千年オリーブが見てきた風景やいろいろな物事について想像し、思いを馳せてみてほしいと思っています。

弟:そのためにも、千年オリーブがこの場所に根付くまでの物語をご紹介したいと思います。その前に、まず全体の形を見てください。みなさんは、どんな形に見えますか? まるで生命を象徴するようなハートの形をしていて、この形が、ぼくたちの会社のロゴにもなっています。次に、幹の太さはどうでしょう。さすが千年を生きてきただけあって太いと感じますか? ぼくは意外と小さいと思うんです。神社にある樹齢千年の杉の木なんかに比べるとね。でも、見た目に反して、実はとても重くてメが詰まっている。

兄:本当に重かったね。みなさんもすでに聞いたかもしれませんが、この千年オリーブはスペイン・アンダルシア地方からはるか10,000km、1ヶ月の海路を経て、この場所にやってきました。

弟:届いた日は忘れもしない、2011年3月12日。

兄:あの東日本大震災が起こった翌日でした。そんな混乱のさなかに無事に小豆島に到着した千年オリーブをいちばん見晴らしの良いところに植えました。そして、3月15日の「オリーブの日」に、厳粛な神事の中、「平和と繁栄」を祈念して黙祷を捧げ、植樹式を執り行いました。


弟:そもそも、どうして千年オリーブをこの島に持ってこようと思ったんだっけ?

兄:シンボルツリーを定めたかったんだと思う。というのも、忘れられない風景があるんです。オリーブの勉強のためにイタリアを訪れた際、樹齢300年と言われるオリーブが樹海のように広がる光景を目の当たりにし、深い感動と幸福感に満たされました。それは、人間の何倍もの年月を生きているオリーブのパワーに圧倒されただけではなく、人智を超えた自然の営みと恵みを、その土地の人々が何世代にもわたって受け継いでいる。その命のリレーの中にオリーブが介在しているということに深く感動したのです。同じように、いま私たちが植えているオリーブが1000年先にもしっかりと受け継がれ、残っていて欲しい。

1000年後もオリーブが残っているということは、1000年後も町が在り続けているということでもあります。オリーブと人とが共存しながら豊かな生活を営んでいる未来の小豆島――そんな姿を強く夢見た瞬間があったのですが、その気持ちを忘れないための、みんなと共有するためのシンボルツリーを定めたかったのだと思う。

弟:植えたばかりのころは千年オリーブが小豆島に根付いてくれるか不安だったね。千年オリーブ自体は驚くべき生命力で小豆島に植えた翌年には実をつけたほど強い木だったのだけど、ぼくたちのほうが未熟で、この千年オリーブを大きく育てようとか、見た目をカッコよくしようとか、へんなエゴがあったりして、手を加えているうちにどんどん枝の元気がなくなっていって。それからは自然なかたちで根付きやすいように整えていきました。

兄:最初は幹にも自由にさわってもらっていたんだけどね。まわりの地面が踏み固められて元気がなくなってしまったこともあって、いまは養生中です。本当はふれられるようにしたいので、どうすればよいか考えているところなので、もう少し待ってもらえたらと思います。

弟:収穫の時期には、この千年オリーブの実をドライオリーブにして食べてもらったりもしています。それに、最近の研究でわかってきたんだけど、千年を生きるこの木には木を支える菌が共生していて、その菌を活かした商品をつくったりもしています。オリーブの実だけではなく、オリーブはまるごと人間の美と健康を支えてくれる。そんなことも象徴してくれています。

兄:いまではこの場所のシンボルツリーにふさわしい存在になりました。この木の存在感は、歴史やストーリー、オリーブが人々に貢献してきた実績とかが全部オーラになって出ていると思う。みなさんもこの千年オリーブからどんなことを感じるか。ゆっくり見てもらえたらと思います。

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