定点で 四季を移り変えて見る

フランス式整形庭園の一角にあるプラタナス並木。「プラタナス」の日本名を聞けば驚くだろう。「スズカケ」である。「13」と同じ木、同い年でもあるという。しかし、比べて見てほしい。まったく別の木に見えるはずだ。その違いは、剪定しているか、剪定していないか。もちろんプラタナス並木のほうが剪定しているスズカケだ。ここまで整形しても、丸坊主にしても、また生えてくる。しかも樹皮で光合成ができる(脱皮もできる!)というから驚きだ。いわば、剪定という適度な刺激があることで、スリムな体型を維持して長生きしているプラタナス並木。一方で、野放しで自由に生きてきた結果、ぶくぶくと太ったあげく、台風で折れてしまった「13」のスズカケ。なんだか人間くさい話である。

左右対称のプラタナス並木は絵になる風景である。それゆえに、写真を撮るだけで満足してしまいそうな絶景である。しかし、かの東山魁夷はこう言った。「絵になる場所を探すという気持ちを捨てて、ただ無心に眺めていると、自然のほうから描いてくれと囁きかけているように感じる風景に出会う」と。なるほど、と言って無心になれるのならば苦労はしない。その境地にいたるには、どうすればいいのか。東山魁夷はこんなヒントを残している。「日本の景色とは何か、四季を写生して感じとろうとした」と。プラタナス並木は四季を考えるにはうってつけかもしれない。春の芽吹きから、緑を深めてむかえる夏の最盛期。そして、秋の黄葉、冬の落葉。そして、また春が来る。絶景とは場所じゃない。四季なのだ。

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