本日は、小豆島交通「島めぐり観光バス」にご乗車いただきありがとうございます。この音声では、バスガイドさんに次ぐ副音声のナビゲート役として、皆さまの小豆島の旅をご案内させていただきます。
土庄港をスタートして、まず最初に向かうのは「小豆島大観音」です。その前に、小豆島の基本情報について、おさらいしましょう。
小豆島は瀬戸内海に浮かぶ小さな島、といっても、瀬戸内海では淡路島に次いで2番目に大きな島です。日本でいえば宮古島とほぼ同じ大きさで、世界でいえばイースター島と同じくらいの大きさです。島の形も独特で「牛」の形をしています。あとで地図をさわって確かめてみてください。
人口は25,000人ほどで、船でしか渡れない離島としては瀬戸内海で最も多くの人が暮らしています。一日に発着するフェリーの本数は日本有数で、時期にもよりますが、終電ならぬ終船、つまり最後のフェリーは20時20分に高松港を出発します。高松の商店街でお酒を飲んでからでも島に帰ってくることができそうですね。
見どころは何と言っても、小豆島の最初の観光地として知られ、神話時代の物語が残る「寒霞渓」。また、小豆島は古代から塩づくりで栄えてきたのですが、江戸時代に醤油づくりにくら替えします。その蔵がたくさん建ち並ぶ「醤の郷」も有名です。それから明治時代になると「小豆島オリーブ公園」の近くで日本初のオリーブが芽生え、戦後の大ヒット映画「二十四の瞳」によって全国に小豆島のことが知れ渡るようになりました。
寒霞渓、醤の郷、小豆島オリーブ公園、二十四の瞳映画村。このバスは小豆島を代表するスポットを1日で巡ってしまう盛りだくさんなコースになっています。この音声では、それぞれのスポットを訪れる前に知っておくと役立つお話をご紹介していきたいと思います。
寒霞渓の前に、このバスは「小豆島大観音」に立ち寄ります。
車窓にその姿が現れたときには、きっとその大きさに驚かれることでしょう。山の中腹に、まっすぐ立ちのぼる、白くやさしいお姿。それが、小豆島大観音です。お参りした人に、しあわせが訪れる。そんな体験が語り継がれ、「しあわせ観音」という名でも親しまれています。
建てられたのは1995年。高さは正式には公表されていませんが、ビルにたとえるとおよそ20階建て相当。2025年に30周年を迎えて塗り直され、その白くやさしい姿はいまもなお、美しく輝いています。瀬戸内の風景を包み込むように、島の人々や旅人を、そして遠く世界の平和までも、そっと見守りつづけています。
では、ここでひとつ質問です。なぜ、観音様の「観音」は「音を観る」と書くのでしょうか?
仏教には、願いごとを唱えると、その声を聞き届けて救ってくれる存在がいるとされています。その仏様こそ、観音様です。けれど、観音様はただ「音を聞く」だけではありません。たとえば、誰かが泣いているとき、その泣き声をただ聞くだけでは、その人の苦しみの理由まではわかりません。観音様は、その声に宿る「気配」や「想い」を、まるで目で見るように深く感じ取り、必要なときには姿を変えて現れてくれるのです。だから、「音を観る」。その人が何を願い、どんな苦しみを抱えているのか。声の向こう側まで、観ているのです。
しかも観音様は、三十三もの姿に変わることができるといわれています。荒々しい姿で悪を砕く「馬頭観音」、千の手で救いの手を差し伸べる「千手観音」など。人々の願いに合わせて、姿も手段も変えて、救いに駆けつけてくれる。それが観音様なのです。
小豆島の観音様の内部は、まるで“祈りの塔”のような構造になっています。1階から最上階までぐるりと螺旋階段が続き、壁一面には約1万4千体もの小さな観音像──胎内仏がびっしりと安置されています。ひとつひとつは小さくとも、それぞれに込められた願いと祈りの重なりが、訪れる人の心を静かに揺さぶります。
最上階、ちょうど観音様の胸のあたりには「釈迦殿(しゃかでん)」があります。ここには、仏教の聖地・スリランカの「佛歯寺(ぶっしじ)」から贈られた、お釈迦様の歯の分身が大切に納められています。ここは“世界の祈りが交差する場所”とも言える神聖な空間。参拝の際は、甘茶をそっと注ぎ、静かに手を合わせてみてください。
ちなみに、胸の部分にある丸窓は、観音様の首飾りを模した装飾の中に溶け込むようにデザインされています。その窓からは、背後に広がる瀬戸内海の絶景と、正面に連なる小豆島の山並み、そして町の風景が一望できます。まるで観音様のまなざしを借りて、小豆島全体を眺めているような、そんな気持ちになるかもしれません。
ほかにも、境内では自分の干支にちなんだ「十二支守り本尊」に手を合わせることができたり、しあわせの絵馬に願いを書いて奉納したり、スリランカ由来のお守り「ピリティヌーラ」を手首に結ぶことができたり。こうしたひとつひとつの体験が、訪れる人の心を観音様のやさしさへと結びつけてくれるでしょう。そして、ぜひ観音様と一緒に写真を撮ってみてください。その一枚が、きっとあなたにとってのお守りになるはずです。
なお、御朱印帳をお持ちの方は、受付にてお預けください。参拝後にお戻しします。それでは、まもなく到着です。バスを降りる際には足元にご注意いただき、やさしい観音様のお姿に心を寄せながら、ゆっくりとご参拝ください。