ー自己紹介をお願いいたします。
みょうじなまえと申します。私はですね、自分のこれまでの経験を通して、女性の身体と性にまつわるアイデンティティですとか、自己決定権の問題を中心に作品を制作しています。特に具体的なキーワードを挙げるとすれば、ルッキズムやエイジズムであるとか、性行為と生殖についてなど、理論としては、色々とロジカルに言えることがたくさんあると思うんですけど、現実を生きていく上でですね、うまく折り合いをつけることが難しいような倫理と欲望の狭間にあるアンビバレントな葛藤みたいなものに興味があってですね、そういうテーマから作品制作を行っていることが多いです。ただ、今回の作品はですね、家であるとか家族や旅に関することをテーマにしているので、あんまり女性性というところには強くフォーカスはせずに制作をしました。
ー鑑賞者にどこを特に見てほしいですか。
作品を作ることは私にとって鑑賞者と作品を介した間接的な対話みたいなものだと思ってるので、受け取った人たちには、どこと言わずですね、自由に見てもらえたらいいなと思います。いつも作品のアイディアを考えるたびに、鑑賞者に宛てたお手紙のようなイメージで制作をしているので、そこから見た人が感じたことを改めてご自身の中で咀嚼したり、私や誰かと共有してもらえたら嬉しいなと思います。
ー本作品の制作に至った理由、経緯を教えてください。
私はですね、パートナーと自分の姉との3人で共同生活をしておりまして、もう20年近くそんな生活を続けていて、当然その3人の関係を私としては家族として捉えてたんですけど、私がこのレジデンスに来てですね、1週間くらい家を空けた頃に、姉とパートナーが大喧嘩になったらしくて、姉が家を出ることを考えてるみたいな連絡をよこしてきたことから急に、この滞在先でですね、帰る家をなくしてしまうみたいな可能性が出てきて。自分の座標がよくわからないっていうか迷子になるみたいな、心細い感覚になってしまって、他人同士が思想をともにしてですね、暮らしていくことっていう難しさっていうのを改めて思い知る事になったんですよね。そこから自分が感じたことをそのまま作品にすることにしました。
ー作品を通じて伝えたいことはありますか。
家族に対する思いや捉え方って、かなり人によって千差万別なので、作品を見てあなたが感じたことが全てですってちょっと横暴ですかね。
ー制作の上でのこだわり、工夫点を教えてください。
制作の上でのこだわりと工夫点...私は個人的な経験を作品化することがすごく多いんですけれども、第2波フェミニズムのスローガンで、個人的なことは政治的なことっていうすごく秀逸な文言があって、私もなるべく自分の個人的な経験が社会の共通の問題に繋がっていく接続点を探るような制作を心がけかけていければいいなと思ってます。
ー家をなくしてしまう可能性から今回の作品の造形に至る制作について、もう少し詳しく教えてください。
去年ですね、パートナーと一緒に2人展を行ったんですけど、実はその際にも家族をテーマにした作品を作っておりました。その展示で制作をした映像作品の一つに私と姉とパートナーが3人で陣地取りゲームをしているものがあって、その映像が今回のインスタレーション作品のベースになってます。映像内ではですね、関係性の対立と修復を重ねて家を建てる様子が積み木遊びを介して表されています。
みょうじなまえ+林航
ファミリー・ゲーム
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2023