ー自己紹介をお願いします。

阿児つばさです。散歩が好きです。インスタレーションやパフォーマンスの作品を作っています。まずタイトルを作って、それと一緒に日々を過ごします。そういう表現手法をシナリオって呼んでいます。シナリオっていうのは、次にどこに行くかとか誰に会うかとか、何をするかっていうふうに思いつくことそのものだったり。いろんな日々の断片を集めて、その都度その都度、発表しています。

ー鑑賞者にどこを特に見てほしいですか。

その展示ケースの中にあるのは、杉の木で、木簡というメディアです。木簡っていうのは紙が作られる以前に記録メディアとして作られていた、木に簡単の簡と書くものです。普通は板状になってるものなんですけど、私は丸いのがいいなと思って、丸くしました。手前に箱、家みたいなものがあるのは、書庫と呼んでて何かを開けてもらうと、皆さんに書いてもらえる和紙のメモ帳があります。その扉も和紙でできています。で、もう少し手前にあるのは、植物たちが育てられています。あと、何か周りの風景とかいろいろ見ながら、ゆっくり過ごしてもらえたらなと思います。

ー本作品の制作に至った理由、経緯を教えてください。

ちょっと長くさかのぼるんですけれど、ずっとシナリオっていう表現手法だったりとかメディアっていうものに関心があって。ていうのは2011年に東日本の原発事故があってから、電気を使うっていうことだったり、作品素材っていうものに関心があって、それからそういうことに関心を持ちながら制作を行っていて。で今回BnAさんだったりFabCafeさんと制作とかお話しさしてもらう機会があって、自分のそういう関心を話したりしていて。メディアとか素材の中に紙っていうものが一つ気になるものとしてあったんですけれど、じゃあみんなで、綾部に。綾部って京都市内からわりと車で1,2時間ぐらいで行けるとこなんですけど、そこにみんなで行ってみようってことになって、実際に行ってみる機会になりました。そこで和紙について見学さしてもらったり、あと自分で奈良の木簡研究室っていうところに行って、紙より前に作られて使われていた木簡っていうもの調べに、学びに行ったりとかして。そういう記録媒体とか、メディアと素材とっていうことを調べていて、何かそういうものが、お話とかも踏まえて媒体、素材、存在みたいなものに繋がっていって、黒谷和紙の工房で原材料を育てているっていう話を聞かせてもらったり実際に見せてもらったりして。何か全て人の手で育出られてるものが身近にあるんだなっていうことに関心を持って今回、インスタレーション作品を作ってみようと思いました。

ー作品を通じて伝えたいことはありますか。

いろいろと今話してないことでも、こだわったりとかいろんなことを入れ込んだりしたんですけれど。今回一番大きく、私の中で気づきみたいなことだったのは、いろんなものを人が育ててるっていうことで。ずっと知ってはいたんですけれど、なんかそれが腑に落ちたっていうのが、和紙の工房を見に行ったときにあったので。何だろう、和紙だったり、山だったり、人が育っていながら、何かを作っているっていう。そういうことをみんなも何となく風景を眺めながら、考えたり、感じてもらえるといいかなと思います。

ー制作の上でのこだわり、工夫点を教えてください。

今回はタイトルを、木簡の簡、簡単の簡、の「簡」にしました。簡単のことをよく考えるんですけれど、難しいなとか、憧れるなみたいなふうに考えていて、今回もそうできたらいいなってことを工夫しました。木簡のことを調べてるときに、紙ができてからも、木簡が使われてたみたいなんですけれど、どちらかというとメモ書きみたいな形で使われていて、貴重な文書とかは紙に書いていたみたいで。だけど今発掘されてるものは木簡の方がたくさん発掘されていて、紙に書かれたものっていうのは残っていなくって。そういう状況とかを見ると、なんか簡単なものばっかり残ってて面白いなとか、貴重な物が残ってない状況って面白いなとか、何か残したいとか、残るとかそういうこともいろいろ考えながら、今の自分の制作のことも、考えてるっていう感じです。

ー作品の中にある木簡には文字が書かれてると思うんですが、どういった意図があるかを少し教えていただけますか。

木簡とかの紙とか文字記録媒体っていうのは、行政文章とか、とともに発展してきた歴史があって。今回その木簡に使っているのは、京都府伝統工芸品の北山丸太だったり、紙も置いてるんですけれどそれは、京都府指定無形文化財の黒谷和紙だったりします。そういったものが生活してる人たち、私とか、来てもらう方と、や街に過ごす人と切り離されないといいなと思って、そこに書いてあるような文字を選びました。それは私がA?っていう作品で、作った文字というか、生活の中で大事な言葉を選んで、置いた文字です。紙も皆さんに書いてもらえるようになってるので、何か観察して、気になる言葉をぜひ残していってもらえたらなと思っています。

阿児つばさ
a? Fê G pop (簡)
ミクストメディア
書庫製作: 金色夜叉工房
2023

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