全体を見ずに 細部に心をよせて見る

イチョウなんてどこでも見られる。そう思う人にこそ見てほしい。街路樹で見かけるイチョウは剪定されているが、新宿御苑では剪定をしていない本来の姿が見られるからだ。手の届くところに枝があるのがその証。街路樹なら切り落とされてしまうところだ。その枝をよく観察してみてほしい。1本の枝から無数の短い枝が伸びている。その付け根の部分が、魚のウロコのような「層」になっているのがわかるだろうか。これは、葉っぱが生えていた跡。イチョウは一年ごとに落葉するので、この層の重なりを数えれば、その枝が生まれて何年経ったのかがわかる。そして、あらためて気付かされる。ひとつの枝が伸びるのに、どれだけ時間がかかるのかということを。

植物が成長するにはものすごく時間がかかるんだよ。そう言われても、すぐに忘れてしまうことが、こうして自分の目で発見してみると身にしみる。愛しくさえ思えるかもしれない。感情移入するということは、植物の中に人間と似た部分を見ているのだろうか。細部を見れば見るほど、世界は生命にあふれ、風景もまたいきいきと見てとれる。ちなみに、イチョウは「雌雄異株」といって性別がある。銀杏の実がなるのは雌のイチョウだが、街路樹に植えられているのは、ほとんどが雄のイチョウ。新宿御苑ではそのどちらも見ることができる。

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