20棟ほどの舟小屋群と背後にそびえ立つ山々。この風景は日本の漁村風景百選にも選ばれています。

なぜ、このような舟小屋がたくさんあるのでしょうか。昔の舟は木造のため、海に浮かべっぱなしにしているとフナクイムシと呼ばれる二枚貝に食べられてボロボロになってしまうことがありました。そのため、船を使用しないときは陸に揚げたり、河口まで運んで真水に浸けたりすることでフナクイムシの被害から舟を守っていました。とりわけ隠岐は冬の風は強く、雪も降り積もります。そのため、このような屋根付きの舟小屋を設けて船を保管していたのです。

このような舟小屋は日本海側にしかありません。その理由は干潮と満潮の水位の差にあります。近くにある解説看板をご覧ください。実は、日本海は干潮と満潮による水位の差が50cmほどしかないのですが、太平洋側はその差が2m~5mにもなります。干潮と満潮の差が5mもあると船を簡単に引き上げることができないため、太平洋側にはこのような舟小屋が作れないのです。

では、なぜ日本海と太平洋でこんなにも干満に差があるのでしょうか。干潮と満潮は月の引力によって起きるといわれています。まさに太平洋がそうなのですが、それに比べて日本海は面積が小さいため月の引力が及びません。では、どのようにして日本海の干満が起きるのでしょうか。それは、太平洋が月の引力によって満潮になったときに海面が上昇し、堰を切ったように日本海に流れ込んでくるのです。その堰にあたるのが対馬海峡や津軽海峡などです。地図を見るとわかるように、その海峡は非常に狭く、水深も浅いため、海水の流入量は少なく、徐々にしか日本海の海水面は上昇しません。そうして徐々に上昇している途中で、今度は太平洋が干潮になるため、日本海の方の海面が高くなり、日本海の海水が太平洋に流れ出していきます。そのため、太平洋は干潮と満潮が1日2回あるのに対し、日本海は1日に1回しかありません。

このように、日本海の面積が小さくて入り口も狭いことから、干潮と満潮の差が50cmしかないという特徴が生まれ、舟小屋が日本海側に造られるようになったといえるのです。

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