壇鏡の滝は「日本の滝百選」と「日本名水百選」に選ばれています。「壇鏡の滝」と呼ばれる由来は、下流にあるお寺の住職が夢でお告げを受けて川の上流に向かったところ、壇になっている滝で青銅製の鏡を見つけたからと言われています。

壇鏡の滝の入り口には大きな杉の木が2本そびえ立っています。それは、なぜなのでしょうか。実は、60年ごとに行われる出雲大社の遷宮の際に、隠岐からも杉の木を寄進していたのですが、せっかく育てた杉の木を無償で提供するのがもったいないと考えた地区の人たちが杉を切らずに済む方法はないものかと考えました。そして、ある若者が、一の鳥居を壊して2本の杉の奥に移動させたのです。そうして、「この2本の杉は鳥居の外にあり、神社ではなく個人の杉であることから切ることができない」として、今日まで残されてきたと言い伝えられています。そんな2本の杉の間を通って、滝へと向かいましょう。

滝も2本あります。右側に見える滝が「雄滝」(おだき)、左側の滝が「雌滝」(めだき)と呼ばれ、2本あることから「夫婦滝」とも呼ばれています。また、隠岐に流された小野篁がこの滝に打たれながら都へ帰ることを願い、見事、その願いが叶ったことから、この滝の水を「勝利の水」として信仰する風習があります。島で闘牛大会や相撲大会が開催されるときには、真夜中にこの滝の水を汲み、大会当日の出陣式において、牛や関係者が飲み干して勝利を願います。

階段を進んで雄滝に近づいてみましょう。雄滝は落差が50mほどあり、滝を裏側から見ることもできます。そのことから「裏見の滝」とも呼ばれています。では、なぜこのような形になったのでしょうか。滝のあたりの地層をよく観察してみてください。上のほうは固い溶岩で、下のほうは柔らかい火山灰でできていることが分かります。下のほうが柔らかいため浸食が進んで削られていき、そのあと、上部の固い溶岩の部分が崩落してこのような形が生み出されたのです。

また、下のほうに柔らかい火山灰が堆積し、その上に固い溶岩があることから、火山活動のメカニズムも見て取れます。火山が噴火したときには、最初に火山灰を噴出し、その後で溶岩が流れ出すので、柔らかい火山灰が下側に堆積し、その上に溶岩が流れ出て固まるというわけです。滝壺のさらに下のほうまで火山灰があり、溶岩の部分も厚く形成されていることから、この場所の近くに噴火口があったことも推測されます。

日本では、このような大きな崖は神様しか造り出せないと考えられていたので、巨岩信仰の場所として神社が建てられて信仰の対象となってきました。

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