「噴火しないでくれ」とは祈らない

林業や狩猟を生業とする人々は、この山神社で年に二日、祭事を行う。この日は、いつも山の恵みを与えてくれる神様へ、人から御供え物を捧げる。だから、この日は山から何ももらわないように、山仕事をしない人が多いそうだ。

災いと恵み。その両方を山はもたらす。霧島神宮の祈りの言葉には、噴火を小さくしてほしいというものはあっても、噴火しないでくれと祈るものはないという。

なぜだろうか。それは、山がもたらす災いも恵みも、人の力を超えた神様の営みだと捉えているからだ。噴火も神様の営みの一部である以上、止めてほしいと祈るのはおこがましいと考えている。大自然のあるがままの姿を受け入れながら、霧島の人々はこの土地で生きてきたのだ。

そして1934年、霧島は日本で最初の国立公園に選ばれた。人々の感謝と畏れによって自然が残されてきた霧島は、世界に誇る日本の風景地として評価されたのである。

あなたの目の前に広がる景色は、火山の営みを受入れ、ともに生きてきた人々が受け継いできた風景なのだ。



写真1枚目:鬱蒼とした森の中にある山神社
写真2枚目:山神社へ向かう道の脇に、温泉の湯気が見える
写真3枚目:亀石坂(旧参道)

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