ざくざくざく──と、玉砂利を踏みしめる音に耳を澄ませてみてほしい。その音はどんなふうに聞こえるだろう。
人間には魂という玉があるという。その玉と玉がふれあうことで心が研ぎ澄まされていく。そうして心が清められていく。玉砂利の音にはそんな理由が隠されているのかもしれない。
ところで、あなたは熱田神宮に何が祀られているのか知っているだろうか。それは、「草薙神剣(くさなぎのみつるぎ)」という剣である。それは一体、どういうことなのか。そのはじまりの物語を辿ってみよう。
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むかしむかし、暴れん坊の神様、スサノオは姉のアマテラスを困らせたあげく、天上界から追い出されてしまいました。
そんなスサノオは、川のほとりで泣いている老夫婦を見かけます。
「どうして泣いているのか?」その理由を尋ねてみると。
「私たちには、8人の娘がいたのですが、毎年、山からヤマタノオロチという怪物がやってきては、ひとりずつ、娘たちを食べていくのです。この娘は最後に残ったひとりです。
今年もヤマタノオロチがやってきます。もうすぐこの娘も食べられてしまうと思うと悲しくて涙が止まらないのです」
スサノオがヤマタノオロチについて尋ねると、老夫婦はこう言いました。
「真っ赤な目をした八つの頭と、八つの尻尾を持つ巨大な蛇で、それも、八つの谷と八つの丘にまたがるほど大きいのです」
スサノオはしばらく考え、こう切り出しました。
「よし、私がヤマタノオロチを退治してやろう。ただし、今から私の言う通りに八つの酒をつくって仕掛けておいてくれ」
ある夜、地響きのような音を立ててヤマタノオロチがやってきます。スサノオは姿を隠してその様子を見守りました。すると、ヤマタノオロチは仕掛けておいた酒を飲みはじめ、酔っ払ってしまったのか、いびきをかきながら眠ってしまいました。
そのときです。スサノオはヤマタノオロチの頭を切り落としバラバラに切り刻んでいきます。しかし、その刀が尻尾に差し掛かったとき、刃先に何かが当たるのを感じました。そこで、尻尾の中を切り裂いてみると、立派な大剣があらわれたのです。
スサノオはこの剣を、かつて困らせてしまった姉のアマテラスに献上することにしました。
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熱田神宮の本宮には何が祀られているのか。それこそが、このときの剣である。では、どのようにして熱田神宮で祀られることになったのか。続きは、本宮での参拝を済ませたあとに次のガイドを開いてほしい。