皆様はお気づきになられたでしょうか? この旅館の玄関に足を踏み入れたとき、十二支のお出迎えがあったことに。

それは絵ではありません。日本の伝統的な染め物である「友禅」によって、「扉」をモチーフにした十二支が描かれています。では、なぜ明神館は「扉温泉」と呼ばれているのでしょうか。その由来は、古い神話にさかのぼります。

あるとき、太陽の神様である天照大神(アマテラスオオミカミ)は、天の岩屋に扉を締めて引きこもってしまいました。すると、世界は真っ暗闇になりました。困り果てた他の神様たちは、天照大神に外に出てきてもらおうと、岩屋の前で賑やかな宴を開きます。そして、天照大神が「なんの騒ぎだろう」と岩戸を開けて外を覗き見た瞬間、力持ちの天手力男命(アマノタヂカラオノミコト)が扉をぐっと開けて下界へ投げ捨てました。こうして天照大神は外に戻り、めでたく世界は光を取り戻しました。

この「天の岩戸伝説」はご存知の方も多いことでしょう。重要なのはその続きです。

力持ちの天手力男命によって投げ捨てられた岩戸は、日本の真ん中に落ちたと言われます。それはどこなのでしょう。「戸隠」という説もありますが、この地域では「このあたりの山に落ちた」と伝えられています。実際に、高さ15メートルの二枚岩が残っているのですが、「扉」という名前はこのような神話に由来しているのです。

この友禅は寺沢森秋さんの作品です。明神館の主人がバリを訪れたとき、その旅すがら名前も知らないまま意気投合した日本人がいました。「日本に帰ったらまた会いましょう。」その約束が果たされたことをきっかけに、「旅館の彩りに」と毎年、作品を贈ってくれるようになりました。今では「今年はどんな作品だろう」と常連さんも楽しみにする扉絵になっています。

寺沢さんだけではありません。明神館にはこのようなご縁で贈られた作品が館内のあちこちに隠されています。ここからの先のガイドでは、その物語の扉も開けてみましょう。

※広間の中には、寺沢さんによる9年間の制作過程を終えた「三体の龍神様が描かれた襖」が完成する予定です。

ちなみに、寺沢さんの作品は十二支の扉絵だけではありません。ロビーから中2階に向かう階段を昇った先には「カラマツ」の作品があります。また、3Fや4Fの廊下にある帯状の友禅も寺沢さんからの贈り物。この地域に根ざす森の草木が遊び心をもって描かれています。中には地域で信仰されている「道祖神」も隠れていたりして、心の清らかな人しか見つけられないと囁かれています。

皆様もぜひ、館内を歩きながら探してみてください。

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