トキの学名は「ニッポニア・ニッポン」。その名の通り、日本にしかいない鳥でした。古くから伊勢神宮の祭具に使われ、江戸時代まではどこにでもいる鳥でしたが、明治以降の乱獲や農薬による環境の変化によって絶滅寸前に追い込まれました。そして、最後は佐渡にわずかに生息するのみとなり、保護したものの、2003年に絶滅してしまいました。
一方、1999年に中国から贈られたトキの人工繁殖がはじまり、トキが生息できる環境を整備したことにより、2008年に10羽のトキを放鳥するなど、飼育下で増やしたトキを佐渡に戻す取り組みも進められています。
良い悪いの話ではありませんが、人工的に絶滅に追い込まれ、本来なら存在していなかったはずのトキが、これまた人工的に生き延びているという矛盾をはらんでいます。はたまた、トキが生息しやすいように環境を整備することは、トキにとっては良いことかもしれませんが、そこで暮らす人間にとってはどうなのでしょうか。その狭間にある問題について考えてみてほしいと思います。