作者は「さどの島銀河芸術祭」を立ち上げた人物です。彼は芸術祭を統括するプロデューサーでありながら、自身も作家であることを忘れていません。ここでは、作家・吉田盛之から、このガイドを聞いている皆様に向けての手紙を掲載したいと思います。
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かつては金の産地として、日本のみならず国際社会にも影響をおよぼしていた佐渡金山は、今年、2024年7月27日、「佐渡島の金山」 としてユネスコ世界文化遺産に正式に登録されました。
佐渡島は、承久の乱に敗れた順徳上皇や、足利義教から弾圧を受けた世阿弥が配流された地であり、江戸時代から明治にかけては近畿・北陸・北海道を結ぶ北前船が盛んに行き来していました。時代時代にさまざまな人や物の往来があり、能や鬼太鼓などの独特な芸能・文化を生み出し、独自の生活スタイルや日本文化が残っている場所です。
「さどの島銀河芸術祭2024」は、トキをはじめとする、多くの生き物を育む佐渡島の豊かな自然や独特な歴史、その中で育まれた民話や伝承、この地で暮らす人々の魅力を、国内外から参加したアーティストが媒介となり再発見していきます。
多様なアート作品が、両津エリア(旧両津市エリア)を中心に、佐渡島各地に展示するほか、ライブパフォーマンス、芸術鑑賞ツアーや体験型プログラムもご用意いたしました。
作品の展示場所を訪れるだけでなく、オーディオガイドと地図を頼りに、佐渡島を巡ってみてください。アートを起点に島内各地域にある自然や食、建築など豊かな文化に触れることを通じて、佐渡島の魅力を発見する機会となるでしょう。
不透明な世界情勢や自然災害など、将来の予測が困難な状態ではありますが、「さどの島銀河芸術祭2024」が、過去を振り返り、より良い未来について思うきっかけになれば幸いです。
「さどの島銀河芸術祭2024」の実現に向けて、携わっていただいた全ての方々に改めて心より感謝いたします。
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作品のタイトル「生生世世(しょうじょうせぜ)」は、生まれ変わり死に変わりを繰り返して経る多くの世。生まれ変わりと死に変わりでそれが際限なく繰り返されるという意味です。
死は同時内省的には体験しえず、さらに死後のことは、生者にとって原理的に体験できません。他者の誕生と死は観察可能ですが、自分のそれは観察も体験もできません。死後の世界は、もしそれがあるとしても、想像に頼るほかありません。自分の存在がどのように移り変わり、それぞれの終わりが新しい始まりへとつながっているのかどうかを想像してみてください。私たちの一人ひとりの存在の一瞬一瞬が、永遠のサイクルの中にどう位置づけられているのかを考え、再発見していただければ幸いです。