作者はカルフォルニア生まれ。彼にとってアメリカのゴールドラッシュと佐渡の金山が重なり、相川で作品を制作することになりました。しかし、実際に佐渡を訪れた作者にとって、その背景は知れば知るほどわからないことばかり。彼が最初に覚えた日本語も「わかりません」という言葉でした。

そこで、作者は自身の手をモチーフにしたオブジェを制作。その指からチャイムがぶら下がり、それを叩くと「Wakarimasen」のメロディーが響きます。この作品はまるで手から「わかりません」を奏でているようにも感じられます。

現在、この作品が設置されている場所に違和感を覚えたあなたは鋭いです。実は、作品が完成した当初は「佐渡奉行所」の駐車場の脇にありました。そこからは、まるでローマのコロシアムのような金鉱の跡地を見下ろすことができます。その場所に作品があったことを想像すると、それは金山に捧げるレクイエムのように感じられたかもしれません。

しかし、現在は別の場所に移動することになり、作品は本来の場所から切り離されました。そのため、メロディーは金山に届かなくなったようにも見えます。この逆説的な状況は、アートが本来の場所と強く結びついていたことをあらためて感じさせます。

その金鉱で、作者がライブを行ったこともありました。それも夜から明け方にかけて。暗闇の中、静かな音からはじまり、明け方の光が差し込むにつれて生命が目覚めるように音楽は展開していきました。建物には音が反響し、音楽が自然の一部となり、時間の感覚が失われる中、最後の一音が鳴り響いたといいます。

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