この作品が展示されたのは2016年、芸術祭の初期の作品のひとつです。作者が佐渡を訪れた際、インスピレーションを得たのは「世阿弥」でした。世阿弥は、将軍の怒りを買って島流しに遭い、この場所からほど近い多田の海岸に上陸したと言われます。そのとき、世阿弥はどんな気持ちがしたのでしょう。そして、佐渡島でどんな暮らしをしていたのでしょう。

作者は、ここから見える田んぼや海、太陽を見ながら「世阿弥は思いのほかこの佐渡で幸せだったのではないか」と思うに至り、この地に世阿弥の書斎を作ることにしました。その書斎は、舟を逆さまにした形で作られ、世阿弥が見ていた風景を追体験できるようにつくられています。世阿弥がどのような気持ちでこの地を見つめていたのか、あなたも想像をふくらましてほしいと思います。

この書斎は秋の彼岸の日にあわせて向きが調整されています。その日になると棚田の稲穂は黄金に波打ち、書斎はボートとなって彼岸へと漕ぎ出していく。果たしてそのとき、どんな光景が見られるのでしょうか。

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