「願」とは、このあたりの集落の名前です。なぜ、そのような地名になったのでしょうか。この地域には「賽の河原」と呼ばれる洞穴があります。賽の河原とは、あの世とこの世の境のことです。日本では昔、親より早く死んだ子供は親不孝とされ、その罰として、地獄に行く前に石積みの労働をさせられると信じられていました。しかし、どれだけ石を積み重ねても、鬼がやってきては積み重ねた石を破壊してしまいます。その苦しみを救ってくれるのが地蔵菩薩とされていました。
この洞穴も幼くして亡くなった子供を供養する場所とされ、たくさんのお地蔵さんが並んでいます。子供を亡くした親がここに来ると、同じ顔をしたお地蔵さんに会えるとも言われ、さまざまな願いが積み重なった霊場です。
奇しくもここは北のどんずまりに位置しています。きっと、あの世とこの世をつないでほしいという願いが、「願」という地名に宿っているのでしょう。