津というのは港のことです。かつて、この地域には2つの港があったことから両津と呼ばれ、その2つの港町は木の橋で結ばれていました。その橋のたもとには「村雨のマツ」と呼ばれる木があります。なんでも江戸時代にはそばに派出所があり、その役人が植えた松と伝えられています。

当時、佐渡の玄関口は両津ではなく小木でした。もともと直江津が本土の拠点だったため、古い時代には佐渡への船は直江津からで出ていました。そのため島の南側が玄関となっていたのです。しかし、明治時代の開港によって両津の港も世界に開かれ、派出所の代わりに税関が置かれることになりました。そのころ走りはじめた蒸気船にとっては水深のある両津のほうが港に適していたのでしょう。

にわかに賑わいはじめた両津港。それも冬にはたくさんの船が押し寄せました。両津港は北西の風をかわせる場所にあり、冬でも波が穏やかだったため、多くの船が避難してきたのです。冬に咲くサザンカのように、冬になると栄えることから「サザンカ港」とも呼ばれました。

北の山が高い壁となって北西からの風を遮り、中央には実り豊かな平野が広がります。その明るい景観の中には、カキを育てるためのイカダが湖に浮かんでいます。そんな現在に至るまでの移り変わりを、この松の木は見届けてきたのかもしれません。

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