平安神宮が建てられたのは1895年、明治時代の話です。京都の長い歴史から見ると新しい神社で、祀られている神様は桓武天皇と孝明天皇。その理由は、平安神宮のなりたちや時代祭から見えてきます。

平安神宮はなぜ建てられたのでしょう。当時、京都は幕末の戦乱で荒廃し、天皇が東京に遷ったことで、衰退の一途を辿っていました。そんな中、京都の人たちは町を復興し、古き良き京都を継承していこうと奮闘しました。その象徴として平安神宮を建てるプロジェクトがはじまり、桓武天皇、つまり都を遷して平安京を築いた当時の天皇を神様として祀りました。その後、京都で最後の天皇となった孝明天皇も共に祀られるようになります。

平安神宮の社殿は、桓武天皇が築いた平安京を再現しています。参拝する人々は、およそ1200年前の平安京が生まれた当時の風景に思いを馳せることができるのです。

そんな平安神宮で毎年10月22日に行われるのが時代祭です。10月22日は京都の誕生日、つまり桓武天皇が京都の都に遷った日です。その日は、桓武天皇と孝明天皇の御霊を「鳳輦(ほうれん)」という神輿に乗せて、京都御所から平安神宮まで京都の中心部を練り歩きます。そうして、桓武天皇と孝明天皇に京都の町の繁栄ぶりや市民の暮らしぶりを見てもらう。そのお供として約2000人の行列が歩きます。つまり、時代祭は単なるパレードではなく、神聖なお祭りごとでもあるのです。

2000人の行列は、孝明天皇から桓武天皇までの時代、つまり、明治維新から平安京が建てられた時代までの1000年を遡るように、8つの時代、20の行列があります。それぞれが各時代の姿を再現し、衣装や道具は厳密な時代考証をもとに再現されています。それも、当時の素材や作り方から復元して作られているため、そのすべてが博物館にあってもおかしくないような祭具です。

そんな生きた時代絵巻を見せられるのは長年の技術をもつ京都ならでは。時代祭を見る人からすれば、それぞれの衣装や道具から当時の人たちの姿を想像することができます。時にその時代の歴史ドラマを妄想することもできるでしょう。

はたして、その歴史ドラマとは何なのか。想像をふくらませるきっかけとなる物語とともに生きた時代絵巻を紐解いていきましょう。

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