ー自己紹介お願いします。
香川裕樹です。主に関西圏を拠点に現代美術のフィールドで活動しています。
私は身の回りにある日用品を収集しそれらを並べたり反復させたりして空間全体を使って展示を行う、インスタレーションという手法を用いて作品を制作しています。
ー鑑賞者にどこを特に見て欲しいですか。
同じ大きさ、形、質感、色をもった、いわゆる大量生産品が反復されて置かれている様子だったり、それらの対称的な置き方にも注目して見ていただければと思います。
また、その中でも良いなと思う部分を是非見つけてみてください。
ー本作品の制作に至った理由、経緯を教えてください。
以前より作品の中で頻繁に登場していた造形的な対称性と、世の中にある非対称な事象といった要素を並べて展示できないかなと考えていました。
本展への出品のお話をいただいた段階で、「系統樹」という古来からの分類システムがキーワードとしてあがってきました。
木というイメージが情報の整理や分類として機能していることに着想を得て、実際に背丈を超える大きさの構造物の中にモノの配置や規則性を持たせました。
と同時に対称性と非対称性の要素も作品の中に組み込み視覚的に体系化させています。
ー作品を通じて伝えたいことはありますか。
作品には全体と部分があり、そのどちらもが重要でそれらのバランスによって成立しています。
あえてどこか1点に注目するならば、床に置かれた無数の円形の写真です。これは、このホテルに宿泊した人たちが、その前後で訪れ、オンラインレビューした場所の航空写真です。美しい写真が並んでいますが、オンライン上に書き込まれたレビューには、レビュアーの主観の蓄積が情報に偏りを発生させる非対称性のイメージでもあります。
これを踏まえて、また全体と部分を行き来しながら見て頂けると嬉しいです。
ー制作の上でのこだわり、工夫点を教えてください。
今作は展示空間の特性上、鑑賞者が自由に作品に近づけないという制限があります。
作品との物理的な距離が発生してしまうからこそ、モノの選択と密度を意識してフェイクグリーンのような生々しい模造品を過剰に配置して距離と見え方のバランスを図っています。
ーあなたにとっての対称性と非対称性とは何を意味していますか。もうすこし詳しく教えてください。
わたしの作品にとって、対称性とはモノを配置する時に、最もシンプルに直接的で、わかりやすく法則や体系を提示できる手段です。
例えば、ボールが1つ置いてあれば、同じ大きさ同じ色のボールを等間隔に並べていくこと。これはひとめで何か作為があるなと感じてしまうようなことです。
一方で、非対称性とは、対称性とは逆に偏りがあって、この作品の中では見た目としては見えてこないものです。
ここでは、非対称性が対称性に集約されてしまう状態について、考えています。
香川裕樹
《対称の樹》
2024
サイズ可変
ビニールボール、アーチ支柱、結束バンド、シューズハンガー、フェイクグリーン、プラスチックプレート、コンクリート平板、コンクリートスペーサー、OHPフィルムにインクジェットプリント、紙にインクジェットプリント、布団ばさみ、木製ボール、磁石、三脚、木製ブロック