ー自己紹介をお願いします。

東畠孝子と申します。現在は滋賀県の信楽町で作陶をしながら美術作品の制作を行っています。
近年は時間や記憶の転換と共有をモチーフに、様々な素材や日用品、写真等を組み合わせた立体やインスタレーション作品として発表しています。

ー鑑賞者にどこを特に見て欲しいですか。

空間内での物の配置や、鏡の映り込みに注意して頂き、見るという行為自体に意識を向けていただければと思います。

ー本作品の制作に至った理由、経緯を教えてください。

中国の伝統楽器である二胡の、「二泉映月」という曲のタイトルから着想を得ました。
空に昇った月が、離れた場所にある二つの泉にそれぞれ映っているイメージです。
この二つの泉は、月を介することでつながっていると私は捉えました。
長い時間や距離の隔たりがあり、近くには感じられない場所や、相手の顔が見えないような状況でも、身近な何かを介することで、そこへのつながりや、地続きにあることを意識できる場所のようなものを作りたいと考えました。

ー作品を通じて伝えたいことはありますか。

普段の生活の中で死角にある場所や物事、人々への眼差しを意識的に持つきっかけとなることを願っています。

ー制作の上でのこだわり、工夫点を教えてください。

展示空間は2つのフロアにまたがっていて、細長い特殊な形をしています。その特徴や意味性を生かしつつ、どのように鑑賞者の視線の流れを空間に取り込むかという点を意識しました。また日常生活の中に無意識的に存在している、さりげない素材を使うことも心がけました。
そういった見過ごしがちなものの中にこそ、今立っている場所からは見えない、死角へ続くヒントがある様に思うからです。

ータイトルの元となった二泉映月にある「二泉」について、もうすこし詳しくお聞かせください。

「二泉」と書いて二つの泉は、「私」と「あなた」をイメージしています。
まず鑑賞者である「私」と、正面にある鏡はすこし離れた場所にある「あなた」です。
私とあなたがお互いを写しあうことで、互いに行き来できるようなイメージです。
また、二つのフロアが一つの空間となったこの展示場所で作品を発表できることも、このイメージを更に強化できるのではないかと考えました。

東畠孝子
《2泉映月》
2024
鏡、化粧石膏ボード、壁紙、カーテン、古い絵

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