芝不器男は松野町出身の俳人です。この地で生まれ育ったことから予土線の列車のことを歌った作品もあります。
たとえば、「汽車見えてやがて失せたる田打ちかな」。田植えの準備のために大きな鍬をふりかぶって土を起こす。野原にはそうして田んぼを打つ人影が点在していて、彼らは黙々と鍬をふるっている。そんな田園風景の中を列車が黒煙を吐き出しながらゆっくりと走りすぎていく。そのとき、手を休めて腰を伸ばして見送る人もいれば、田を打ち続ける人もいる、そんな松野町の風景がこの句の世界につまっています。
ほかにも、列車にまつわる歌としては、こんな歌があります。
すれざまに汽車はやす子や金鳳花
摘草や汽車の煙をふりかむり
汽車着くや焼山晴れてまのあたり
これらの歌にどんな想いがこめられているのか、芝不器男の生涯とともに記念館で振り返ってみてはいかがでしょうか。