日本には昔から玄関にお花を飾っておもてなしをするという風習があります。ロビーでゲストをお迎えしているのは「芍薬・牡丹・百合」の3つのお花です。「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」という落語などで使われる女性のふるまいを表現した言葉ににちなんだお花で、訪れた人々を華やかにお迎えしています。さらにこれらのアートには、江戸時代のとある物語が隠されています。
当時の江戸では「贅沢は禁止」とされ、派手な着物や暮らしはタブーとされていた時期がありました。しかし、江戸の人たちは黙ってそれに従ったわけではありません。おしゃれを楽しみたい江戸の人たちは表向きには法律に習いながらも、こっそり着物の裏側に派手な模様を着込んだり、太陽の光にあたると模様が浮かび上がるような繊細な柄が生み出されました。それが「江戸小紋」です。たとえば中央のユリの花の赤い背景には江戸小紋の代表的な鮫小紋、つまり鮫肌のような点模様をモチーフにした模様が描かれています。