葵祭の儀式には「路頭の儀」と「社頭の儀」があります。みなさんが目にしている行列は「路頭の儀」。平安時代の衣装をまとった500名以上の人たちが参加する大行列です。この行列は「近衛使代」と呼ばれる天皇の使者の代理を務める人物を中心とした本列(第一列〜第四列)と、「斎王代」を中心とした斎王代列で構成されています。この行列はただ歩いているだけではありません。行列そのものが神事であり、神聖な儀式の一部なのです。
この行列が下鴨神社や上賀茂神社に到着すると、「社頭の儀」という儀式が行われます。このとき、天皇の使者が天皇から預かった言葉を神様に伝え、運んできたお供物を奉納します。その後、演奏に合わせて舞が奉納されたり、馬を走らせたりする神事が行われます。つまり、この行列に参加している人たちには、ひとりひとりに意味があり、役割があり、物語があります。神社で行われる社頭の儀を見れば、その答え合わせができるのですが、残念ながら一般の人が社頭の儀を見ることは叶いません。しかし、路頭の儀の行列を見ながら、登場人物のひとりひとりが果たす役目を想像してほしいと思います。
たとえば、馬に乗った位の高い人物の後ろには、箱などを持った従者が付き従います。この箱の中には位の高い人が神社内で履き替える靴や、社頭の儀で使う小道具が入っています。このように、ひとつひとつの道具にも意味があり、そのすべてがお祭りに欠かせないものなのです。