佐渡金山を象徴する景観のひとつが「割戸(われと)」です。江戸時代の最初期に本格的な採掘が行われた場所であり、巨大な金脈を追い求めて人力で掘り進んだ結果、山そのものがV字に裂けてしまいました。割れ目は幅約30m、深さはおよそ74mにも及びます。手作業で山を割るほどの欲望。そのすさまじさは、佐渡金山の歴史を象徴しています。

作者が着目したのも、この「欲」でした。金を精錬する際には「吹子(ふいご)」と呼ばれる道具が使われましたが、そこにはタヌキの皮が用いられていたといいます。そのため、佐渡には本来いなかったタヌキが、本土から持ち込まれました。金を得るために連れてこられた動物たち。しかし一方で、たぬきは神として祀られることもありました。消費の対象でありながら、崇められる存在でもある。佐渡におけるたぬきの立場は、人間の欲望の二面性を映し出しています。

作品は巨大なたぬきのオブジェとアニメーションで構成されています。愛嬌のある姿に思わず笑みがこぼれる一方で、どこか不穏な気配が漂っています。あなたはその腹の中に何を見出すでしょうか。

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