近未来の日本を描いてきた映画監督・長谷川億名(はせがわ よくな)。彼女の最新作は、佐渡島を舞台に制作されたSF長編です。テーマは「遠い存在とのコミュニケーション」。舞台は2万年後の未来。資源を求めて宇宙へ脱出したグループと、地球に残り続けたグループに分かれた人類。彼らの行く末を描きつつ、「未来篇」「未来縄文篇」「現代篇」の三部構成で、時空を超えたつながりを探ります。
タイトルの「コスモ・コルプス」には「宇宙共同体」という意味が込められています。そして、この作品において重要なテーマとなるのが「記憶の継承」です。監督は佐渡でのリサーチの際、「祖父母の時代には人々がテレパシーのような力を当たり前に使っていた」という話を耳にしました。あまりに日常的だったため記録も残らず、やがて失われていった力。その言葉から、同じように人類が忘れてしまった力が他にもあるのではないか──そう考えるようになったといいます。
こうした着想をもとに、撮影は佐渡全域で長年にわたって行われました。島の人々の協力を得ながら完成した作品は、舞台である佐渡でも公開され、芸術祭の開催と同時に届けられることになりました。実際の舞台でこの映画を観ることは、特別な体験です。佐渡で出会った風景がスクリーンに現れ、その逆もまた起こる。自分が見ているのは映画なのか現実なのか──境界が揺らぐ感覚を、ぜひ味わってみてください。