鳥居の扁額には、「布都御魂大神(ふつのみたまのおおかみ)」と刻まれています。
「布都(ふつ)」とは、剣を振るときに「ふっ」と鳴る音や、鋭く物を断ち切るさまを表しているといわれています。その音のように、邪を断ち、道を切り開く力を宿した神剣──それが、布都御魂剣(ふつのみたまのつるぎ)です。
この剣には、こんな物語が伝わっています。
初代の天皇が国づくりの旅をしていたとき、敵の力に倒れ、軍勢もろとも動けなくなってしまいました。その様子を見た天の神様は、ひと振りの剣を天皇に授けます。「この剣があれば、道はひらけるでしょう。」すると、不思議なことに、天皇はふたたび目を覚まし、軍勢も力を取り戻しました。こうして天皇は旅を進め、日本の国をまとめあげることができたのです。
天皇は剣の力に感謝し、長く宮中で祀っていましたが、やがてその剣はこの石上の地に移され、神様として祀られることになりました。それが、石上神宮のはじまりです。石上神宮にはそんな剣にまつわる神様が祭られているのです。
この鳥居をくぐるとき、どうぞ思いを馳せてみてください。日本のはじまりに力を貸した剣の姿と、それを祀る人々の祈りに。