「神杉」と呼ばれるこの杉は、樹齢300年を超えるもの。万葉集にも、「石上布留の神杉」と詠まれたこの場所には、かつて神の宿る木として、多くの杉が茂っていたといいます。この神杉のそばに立つと、遠い昔、人々がこの木に向かってどんな祈りを捧げていたのか、静かに想像が広がっていきます。

石上神宮は、古代、軍事を司った物部氏が祭祀を担い、ヤマト政権の武器庫の役割も果たしていたと考えられています。その背景にはこんな伝説もあります。物部氏の遠い祖先が、天から地上に降りたとき、天の神様から「十種神宝(とくさのかんだから)」を授かりました。この十種神宝は「ひふみよいむなやこと、ふるべゆらゆら」と唱えながら振り動かすことで、死者すら生き返らせる力があると信じられてきました。

石上神宮で祀られている剣の神様は、ただ武力を象徴するだけではありません。石上神宮は、命の再生を願う祈りの場であり、心と体をふるい起こすための力を伝えてきたのです。

Next Contents

Select language