石上神宮の拝殿は、平安時代の天皇から贈られたもので、もとは宮中で最も大切な儀式=新嘗祭に使われていた建物でした。新嘗祭は、収穫に感謝する日本最古の祭り。その前夜、天皇の心と体に力を呼び覚ますため、「鎮魂祭(ちんこんさい)」という儀式が行われます。

鎮魂祭とは、魂をふるい起こし、心と体に活力を与える祈り。ときに病を癒し、命さえ救う力があると信じられてきました。宮中で鎮魂祭が行われる日には、ここ石上神宮でも、同じ祈りが捧げられます。

拝殿は現在、国宝に指定されています。日本の信仰の原点が刻まれている拝殿。ここに立てば、かつて幾度となく捧げられてきた祈りの重みが、静かに伝わってくるでしょう。ここでは、お願いごとをする前に、まずは感謝の気持ちを思い出してみてください。日々を生かしてくれているものに、そっと心を向ける。そんな静かな祈り──それこそが、日本の信仰の原点なのかもしれません。

※毎朝8時30分には「朝拝」が行われています。誰でも参列でき、国宝の拝殿で神職の方とともに静かに祈りを捧げることができます(初穂料300円)。この特別な空間で、祈りに身をゆだねてみてはいかがでしょうか。

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