この神社には、草薙剣の神様が祀られています。草薙剣には、こんな物語が伝わっています。
むかしむかし、旅をしていたスサノオという神様が、とある川辺にさしかかります。そこには、年老いた夫婦とひとりの娘が立ち尽くし、声を殺して泣いていました。
尋ねると、彼らは語りました。「八つの頭と八つの尾を持つ怪物、ヤマタノオロチに、これまで七人の娘を奪われました。残るこの子も、まもなく喰われてしまうでしょう。」
それを聞いたスサノオは、しばし考え、こう告げます。「心配はいらぬ。私がその怪物を退治しよう。」
そして、老夫婦に命じました。「八つの大きな酒樽を用意して並べておきなさい。」
やがて、地を揺るがすような音を立てて、ヤマタノオロチが現れます。大蛇は酒の香りに誘われ、八つの頭を酒樽に沈め、夢中で飲み干しました。しばらくして、酔い潰れた大蛇は地面に倒れ伏します。
そのとき、スサノオは剣を抜き放つと、ひとつ、またひとつと八つの頭を次々と斬り落としていきました。そして、最後に尻尾を切り裂くと、そこから光り輝くひと振りの剣が現れたのです。この剣は、のちにヤマトタケルの手に渡り、「草薙剣」と呼ばれるようになります。
最後に、この場所で振り返ってみてください。そこに建つのは、出雲建雄神社の拝殿。かつて内山永久寺にあった建物を移築したもので、いまでは国宝に指定されています。静かに佇むこの拝殿にもまた、長い祈りの時が、静かに積み重なっているのです。