文化人として知られる井伊直弼ですが、その基盤には13歳から井伊家の菩提寺でもある曹洞宗の清凉寺において励んでいた禅の修行がありました。直弼は仙英禅師より印可証明の付偈を受け、袈裟血脈も授与されました。直弼は禅の精神を基盤として茶の湯や能を学び、武にも優れた文武両道の達人でした。

武といっても、剣術、馬術、兵学など多岐にわたります。かつての埋木舎には武道場があり、武道もこの埋木舎で学んでいたのです。

中でも、居合術は自ら「新心新流」という一派を創設。その極意に「保剣」という教えがあります。その心は「本当の意味で勝つためには刀を滅多に抜いてはいけない」という哲学です。仮にその場の怒りにまかせて敵を討ったとしても、家を滅ぼしてしまえば負け。そうならないためにも、まずは忍耐が肝心で永久に勝利者の地位を保つことが真の勝利である説いているのです。

直弼の言葉で言えば「武は決して血を喜ぶものに非ず、血を見ずして事の治まるを見る」。あなたはその言葉からどのような思想を感じ取るでしょうか。

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