女木島は桃太郎伝説の鬼が住んでいたとされる大洞窟が残り、いまも島の一番の観光スポットとなっています。
島名の由来には、いくつかの説があります。
たとえば、屋島の合戦で那須与一が射抜いた扇のかけらが、この島へ漂い着いたというもの。
このあたりの言葉で「壊れる」ことを「めげる」と言うことから、「メギ島」と呼ばれるようになったとも伝えられています。
その女木島が脚光を浴びたのは1914年。
高松の小学校の先生が、島の山頂付近で大きな天然洞窟を発見したのがきっかけでした。
広さは4000平米、奥行きは400mにおよぶ巨大な空間。
桃太郎伝説と結び付けて紹介されたことで、女木島は別名「鬼ヶ島」とも呼ばれ鬼が住んでいたとも言われています。
一方で鬼ではなく、かつてこの海を支配した海賊が拠点にしていたのではないか──そんな説もあります。
けれど、人々の心をとらえたのは「鬼が住んでいた」という物語でした。
「むかしむかし、あるところに……」の「あるところ」とは、この女木島だったのかもしれません。
現在、洞窟の内部には鬼のオブジェが飾られ、多くの観光客が訪れています。
洞窟探検と、山頂から見渡す360度の瀬戸内海の絶景を楽しむことができます。
島には狭い平地と段々畑が広がり、人々は畑作と漁業を営んできました。
女性が重い荷物を頭にのせて運ぶ「頭上運搬」の光景は、この島ならではの日常でした。
家々を囲む「オーテ」と呼ばれる石垣も、女木島の象徴です。
潮風から家を守るために積まれた石が、集落を優しく包み込みます。
山頂に立てば、瀬戸の海を一望できます。
春には2000本の桜が咲き誇り、海の青に淡い色を添えます。
浜辺にはモアイ像が並び、夏には海水浴場がにぎわいを見せ、3年に一度開かれる瀬戸内国際芸術祭では、全国から多くの人が訪れ、アートと風景の出会いを楽しんでいます。
伝説と暮らし、そして観光。
小さな島のなかに、さまざまな顔を持つ女木島。
船の窓からその姿を眺めるとき、あなたの目にはどんな「鬼ヶ島」が映るでしょうか。