江戸時代初期の万治元年(1658年)に19代島津光久によって築かれた仙巌園は、公開面積約50,000㎡にも及ぶ広大な大名庭園です。一般的な日本庭園であれば人工的な築山や池を作り上げて庭の景色としますが、ここ仙巌園では、庭の中心部にはそういったものが見られません。なぜでしょうか?
その答えは、庭の正面に広がる景色にあります。鹿児島湾とそこに浮かぶ桜島―これらを庭の中の池と築山に見立てているからです。自然の風景を庭の景色に取り入れる技法を「借景」といい、他の日本庭園にも見られるものですが、仙巌園ほどの雄大なスケールの借景庭園は他に類を見ません。
さらに、琉球国王から贈られたとされる中国風の東屋「望嶽楼」や、山肌の岩に巨大な文字を刻んだ「千尋巌」、中国浙江省の蘭亭をイメージした「江南竹林」と「曲水の庭」など、庭園の随所に中国文化の影響が色濃く見られる点も特徴です。
実は、「仙巌園」という名前も、この地の景観が、中国江西省にある景勝地・龍虎山仙巌と似ていることから名づけられたものです。日本の大名庭園は、中国の古典などから名前を付けることが多い中で、実在する地名から名づけられるのは珍しいと言われます。南の海の玄関口である鹿児島にふさわしく、海外文化で彩られた庭園をお楽しみください。