目の前にある巨大な石造りの建物は、島津家の歴史に関する展示を行っている博物館・尚古集成館ですが、実はこの建物自体が世界文化遺産の構成資産です。なぜ、この博物館の建物が世界文化遺産に登録されているのでしょうか。
もともとこの建物は、幕末の慶応元年(1865年)に、薩摩藩の機械工場として建てられました。一見すると西洋風の建築に見えますが、日本人だけの力で建設された現存する日本最古の洋風工場建築です。
幕末から明治にかけての洋風近代建築と言うと、赤レンガの建物を思い浮かべるかもしれません。しかし、この工場にはレンガは用いられず、代わりに溶結凝灰岩と呼ばれる石が使われています。これは、江戸時代から鹿児島で培われてきた石造建築技術を活かして建設を行ったためです。
さらに、外壁の足下部分の丸まった形状には、神社建築に用いられる亀腹石という技法が用いられており、建物内部の小屋組みも、太く大きな梁を採用するなど和風建築の影響が色濃く表れています。西洋の知識を取り入れつつ、日本の伝統技術も融合させた、当時の人々の試行錯誤の努力をしのぶことができます。こうした点が日本の近代化の過程を物語る貴重な遺産であると評価され、建物自体が世界文化遺産の重要な構成資産に認定されたのです。
館内では、常設展示として実際にこの工場内で使われていた工作機械を見ることができます。さらに、様々な展示資料や解説により、島津家の歴史と近代化のストーリーを知ることができますので、ぜひ足をお運びください。