ここは、時間をしまう蔵です。
壁一面に並ぶ桐箱。
1716年から、2137年まで。
まだ訪れていない未来の箱まで用意されています。
中川政七商店には三百年以上の歴史があります。
けれど、その記録はきちんと保管されていませんでした。
そこで創業300年を機に、ひとつの決断がなされます。
「次の400周年を迎えるときに困らないよう、きちんと残そう。」
そうして生まれたのが、この時蔵です。
右端の1716年と記された箱から始まり、その年の出来事を収める。
中身の一部は、壁に展示されています。
たとえば、こちらの「奈良曝布」と書かれた判子。
真っ白に晒した麻の生地にだけ押されていたものです。
白の美しさから、「麻の最上は南都なり」と評された奈良晒。
その品質の高さを、いまに伝える印でもあります。
足元にも目を向けてください。
8センチ角の小さな木片が、隙間なく並んでいます。
合計、およそ3万3千ピース。
長い歴史も、小さなことの積み重ねでしかない。
そんな想いが敷き詰められているのです。
変わり続ける店が、きちんと立ち止まれる場所。
未来の誰かがこの箱を開けたとき、そこに何を見るのでしょうか。