お座敷にある大きな鹿の屏風。
興福寺に仕えていた画家、内藤其淵(きえん)の作と伝えられています。
鹿を描く名手として知られ、
その絵を見た雄鹿が本物と見まがい、飛び込んだという逸話も残っています。
静かな絵です。
けれど、ただ写実的なのではありません。
鹿の歩み、首の角度、風に反応する耳の動き。
奈良で鹿とともに暮らしてきた者でなければ描けない気配があります。
さて、この場所は「茶論(さろん)」と呼ばれています。
ここでは、お茶を点て、一服いただくことができます。
昭和の後期になると、
中川政七商店は新たな事業を立ち上げます。
それは、
茶道具の仕事でした。
ところで、奈良晒と茶には、もともと深い縁がございます。
茶人の千利休は言いました。
「茶巾は白くて新しいものがよい」
茶巾とは、茶碗をぬぐうための麻のふきん。
奈良晒は、茶の湯で求められた白でした。
茶と布と、商い。
その静かな流れが、いまもこの空間に息づいております。