きっかけは、まさかの猿でした。

中川政七商店は、あるイギリス人の作家に、
奈良の象徴である鹿のオブジェを依頼します。

完成した作品を見て、驚きました。
鹿の背中に、猿が乗っていたのです。

頼んだのは、鹿だけなのに……でも、不思議と悪くない。
そのまま飾られ、やがて大切にしまわれました。

時は流れ、2021年。
この場所をつくることになります。
そのとき加わったのが、猿田彦珈琲とすき焼き割烹 㐂つね。

鹿。猿。狐。
動物が、そろった。

だったら、名前は「鹿猿狐ビルヂング」でいいじゃないか。

そのとき、思い出したのです。
あのオブジェには、猿がいた。

ならば、狐も。
同じ作家に、狐のオブジェを依頼しました。

そのときばかりは、ひとこと、言い添えたそうです。

「お願いだから、ほかの動物はつけないでくださいね。」

ちょっとした笑い話のようですが、
昔から、まちを動かすのは外からの風でした。

奈良に根を張りながら、外の風も受け入れる。
伝統を守るとは、閉じることではなく、ひらくこと。

歴史は、計画どおりには進みません。
でも振り返ると、ちゃんと意味が並んでいる。
鹿猿狐ビルヂングは、そんな建物なんです。

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