本堂の中央に安置されているのは、弥勒菩薩。
弥勒菩薩は、未来の仏さまです。
いまから遠い未来、
この世界にあらわれ、
人々を救うといわれています。
けれど、
あなたの目の前にあるこのお姿は「御前立」。
本尊は、その奥、宮殿(くうでん)と呼ばれる箱の中に安置されています。
めったに開かれることのない秘仏です。
本堂の柱と同じ、慈恩寺の木・ヒメコマツで彫られた弥勒菩薩。
その胎内には、経典が納められていました。
見えないところに、
祈りが重ねられている。
いま、あなたが向き合っている御前立への祈りも、
その奥にいる本尊へと、静かにつながっていきます。
弥勒菩薩のまわりには、
過去を象徴する仏さま、
そして現在を守る仏さまが並びます。
未来だけではなく、
過去と現在も、ともに祀られている。
三つの時間が、
ひとつの場所に集まっています。
ここで、少しだけ立ち止まってみませんか。
あなたの「過去」に、どんな願いがありますか。
やり直したいこと。
感謝したいこと。
許したいこと。
そして「現在」。
いま、いちばん守りたいものは何でしょう。
最後に「未来」。
これから、どうありたいですか。
弥勒菩薩は、
遠い未来の仏さまでありながら、
この場所で、いま静かに座っています。
未来とは、
どこか遠くにあるものではなく、
過去と現在の延長線上にあるもの。
ここで手を合わせるとき、
三つの時間が、
ひとつにつながるのかもしれません。
この本堂は、幾度も焼け、幾度も再建されました。
それでも、祈りは絶えませんでした。
未来を信じる力が、
この場所を支えてきたのです。
いま、この場所で手を合わせるあなたも、
その時間の中に、そっと加わっているのです。