本堂が再建されたのは、
江戸時代の1618年。
それから、およそ二十年後。
この薬師堂が建てられました。
堂内に足を踏み入れると、
まず目に飛び込んでくるのは、金色の仏さま。
中央に座すのは、薬師如来。
人々の病や苦しみを癒す仏さまです。
左手には、薬壺。
あらゆる苦しみを和らげる薬が入っているといわれます。
そして、
右手をご覧ください。
いちばん前に出ている指は、どの指でしょうか。
そう、薬指です。
「薬指」という呼び名は、
薬師如来のこの手のかたちに由来するという説があります。
古くは、薬を塗るための指とされ、
特別な力が宿ると考えられていました。
いまでも、指輪をはめるのは薬指。
心臓につながる大切な指ともいわれます。
薬を授ける仏の手。
その静かな仕草に、
人々は癒しの力を重ねてきました。
しばらく、その手を見つめてみてください。
力強く握るでもなく、
拒むでもなく。
差し出されているようにも、
静かに受け止めているようにも見えます。
両脇に立つのは、日光菩薩と月光菩薩。
昼と夜。
二十四時間、薬師如来を看護師のように支え、
人々を見守る存在です。
薬師如来は、病や苦しみに向き合うために、
十二の大きな誓いを立てたといわれます。
その誓いを、具体的に守る存在がいます。
薬師如来の背後をご覧ください。
武装した十二の守護神。
十二神将です。
それぞれが方角を守り、時間を守り、
そして干支と結びついています。
たとえば、北東。
北東は、十二支でいうと「丑」と「寅」の間にあたります。
この方角は「鬼門」と呼ばれます。
なぜ鬼門なのでしょうか。
鬼の姿を思い浮かべてみてください。
牛のような角。
虎の皮のふんどし。
それは、この丑寅に重ねられたものともいわれます。
見えない不安や災いを、
人は「鬼」という姿で表しました。
そして、その方角を守る存在として、
十二神将が置かれたのです。
このように、仏さまを守り、この堂を守り、
そして、あなたをも守っているのが十二神将です。
ここにある十二神将の多くは、鎌倉時代に作られました。
鎌倉時代。
日本の仏師たちが、独自の仏教美術を大きく花開かせた時代です。
とくに京都では、慶派(けいは)と呼ばれる仏師たちが、
写実的で、力強く、生きているかのような仏像を生み出しました。
その時代の最先端の美意識と響き合う像が、
遠く東北のこの慈恩寺に伝わっている。
それは、実は、とてもすごいこと。
都と深く結ばれてきた歴史があったからこそ、
この地に、これほどの像が伝わったのです。
衣装に込められた性格。
表情に宿る感情。
立ち姿に秘められた意味。
日本の仏師たちは、
仏像の中に、祈りを刻みました。
それぞれの頭には、干支の動物。
あなたにも、干支があります。
これから、自分の干支を思い出し、
あなたを守る一体を探してみてください。
そして、その姿を見つめてみましょう。
そこから、どんなものが見えてくるでしょうか。
次のガイドは、あなたの干支の像の目の前に立ったタイミングで、
自分の干支を選び、聞いてください。