やぁ、よくきたね。ここは旧芝離宮恩賜庭園。東京に残る最も古い大名庭園のひとつだよ。
え? わたしが何者かって? ふふふ、この庭の主人、ってところかな。さぁ、わたしがこの庭園を案内してあげよう。
ここまでは電車で来たのかい?
駅からここまでの道は普通の陸地に思えただろうが、もともと海だった場所を埋め立てて作ったんだ。
ダンプカーもクレーン車もない江戸時代のはじめにね。今から約350年前さ。
そこに藤棚があるね。ちょっと座ってみようか。とてもいい景色だよ。
おや、誰かの声が聞こえるね。
「ふふふ、ようこそ旧芝離宮恩賜庭園へ」
きみはこの藤棚に咲いている藤の花だね。
「ええ、藤の花です。4月中旬から5月初旬になるとここで咲き誇って、庭園を訪れるみなさんのことを見守っています」
この庭園はもともとどんな場所だったのかな?
「ここには、江戸のはじめに小田原の藩主であった大久保忠朝さまがお建てになったお屋敷がありました。小田原から庭師をお呼びになって、この庭をおつくりになったのがここの始まりと聞いております。その後、いくつかの大名家を経て、幕末には紀州徳川家のお屋敷となり、明治になると有栖川宮家の邸宅となりました。その後、宮内省が買い上げて「芝離宮」となります。人の持ち主は変わっても、春が来れば花は咲きます。震災で庭の木々が焼けたこともありましたが、それでも新しい命が植えられ、また季節ごとに花が咲いてきました。そしていまは、こうして皆さまに開かれた庭となっております」
説明ありがとう。そうなんだ、ここはもともと大名家の屋敷だったんだ。
きみから見たこの庭園の魅力はなにかな?
「ええ……。この庭は、潮入りの池を中心に、ゆるやかに巡る“回遊式”のつくりでございます。歩くと、景色が少しずつ姿を変えていきます。小高い山や石組みによって、遠くを近くに、近くを遠くに感じさせる工夫がなされているのです。わたくしは、ここからその様子を、風に揺れながら見守っています」
そうなんだ。この庭は、歩くことで景色が変わるように作られている。立ち止まる場所ごとに、違う顔を見せてくれるんだ。
さぁ、目の前に広場があるね。まずはそこを見てみようか。