なんだ、なにもないじゃないか、って思ったかい?
ふふふ、実はこの場所には立派な西洋館が建っていたんだ。明治のころ、宮内省が外国からのお客様をもてなすために建てた建物さ。
そこに石があるだろう? ちょっと声をかけてみよう。

やぁ、きみはここにあった西洋館の礎石だね。

「ああ、そのとおり。私は西洋館の礎石。ここに立ち、世界を迎えていたんだ。ウェルカム・トゥ・ジャパン、というわけさ」

礎石って、なんだっけ?

「礎石っていうのは、柱の根元に置かれる土台となる石のことさ。つまり、立派な洋館の柱がおれの両肩に乗っかっていたんだ」

どんな人がきていたんだい?

「各国の外交官や皇族の客人たちさ。シルクハットやドレス姿で着飾った人間たちが、この庭を眺めながら行き交っていたよ。あのころは華やかな時代だったな」

残念なことに洋館は1923年──約100年前にすべて焼けてしまった。関東大震災でね。
さぁ、それでは右回りで庭園を見ていこう。
ここからは、庭の時間をたどるように歩いてみようか。

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