目の前に小高い山が見えてきたね。
これは「大山」といって、この庭のなかで一番高いんだ。
その近くには特徴的な形の石組みがあるね。
これはなんだと思う?
「それは枯滝じゃ」
おや、その声は誰だい。
「わしじゃ、わし。大山じゃ」
そうだったね。枯滝について、教えてくれるかな。
「枯滝というのはのう、岩の組み方だけで滝を表現したものじゃ。水は流さず、岩だけで渓谷に落ちる滝を表しておる。奥の岩を滝に見立て、手前の岩を屏風のように立てることで、奥行きを作っておるのじゃ」
聞こえないかい? 水がなくても、水の流れを感じさせる。想像力の装置なんだね。
「そうじゃ。せっかくじゃから、ぜひわし──大山にも登ってみなさい。危なくないように石段から登るとよいだろう」
それじゃあ、ちょっと登らせてもらうよ。
……なかなか見晴らしがいいだろう。あっちにある高層ビルの姿が見えるね。
でも、昔はぜんぜん違う景色だったんだ。そうだろう?
「ああ、かつてここからは房総半島や筑波山、富士山まで見ることができたのじゃよ」
そうなんだよ。
ここから見る富士山は絶景だったな。晴れた日は、みんな足を止めて眺めていたよ。