そろそろこのツアーもクライマックスだね。そこの石の階段を登るとあるのが九尺台だ。
九尺って言葉はご存知かな? ちょっと本人に語ってもらおうかね。

「ようこそ、いらっしゃい。わたしが九尺台。九盈台とも呼ばれているの」

おっと、まずは九尺の説明からしてもらおうか。

「九尺というのは高さのことよ。昔の日本では“尺”という単位を使っていたの。1尺は約30.3センチ。だから9尺は272.7センチ──およそ2.7メートルね。ここに立つと、目線が変わるでしょう」

なるほど。九盈っていうのは?

「盈というのは、水や月が満ちるという意味ね。ここは昔、海と繋がっていた。潮が満ち、月が昇る。その様子を、ここから何度も見てきた。だから九盈台とも呼ばれているの」

そう、海と繋がっていたときは、ここの景色はだいぶ違ったんだよね。

「ええ、かつてここからは芝浦一帯の海と漁村が見渡せたの。このあたりは漁が盛んで、ここで取れた魚は“江戸前”と呼ばれていたのよ。名物の芝海老なんかは、将軍家にも献上されてね。武家が水泳の練習に使うこともあったの。武士が泳いでいる姿──想像してみて。なかなか勇ましいでしょう」

この場所はこの庭園の変化を見守ってきた象徴的な場所なんだ。
今ではビルが見えているけども、それもいつか貴重な風景だったように思えてくるかもしれないね。
この庭から見える景色は、これからも変わっていくだろう。

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