一日に三度。八丈島空港を離着陸する飛行機を、テラスからも見ることができます。
東京・羽田から、たった55分。それなのに、あなたが乗ってきたあの飛行機の着陸は──「日本一難しい」といわれています。
ANAは、世界の空港を離着陸の難しさでランク分けしています。その最高難度「カテゴリーD」に分類される空港は、国内でただひとつ。この八丈島空港だけです。
理由は、島の形にあります。滑走路の北には標高850メートルを超える八丈富士、南には700メートルの三原山。ふたつの火山にはさまれた谷間を、風が複雑にうねりながら吹き抜けていきます。特に南風の日は、三原山から吹き下ろす風が気流をかき乱す。さらにこの滑走路は、中央がわずかに高く、両端に向かって下る、かまぼこのような形をしています。パイロットは接地の瞬間まで、繊細な操縦が求められます。
それでも、就航率はおよそ95パーセント。360度すべての風向きに定められた基準を守りながら、特別な訓練を積んだパイロットたちが、今日もこの島に降りてきます。あなたが無事にこの島へたどり着けたのは、その技術のおかげです。
──ところで。
この島は、昔から「たどり着きにくい島」でした。飛行機のなかった時代、島を隔てていたのは山ではなく、海でした。島のまわりを流れる黒潮は、世界有数の速さを持つ海流です。江戸から船を出しても、黒潮をはじめ、風や波が行く手を阻みました。だからこそ江戸幕府は、この島を「流人の島」に選びました。簡単には、帰れない島だったからです。
今でも、船だと片道およそ11時間。飛行機に乗っても、同じ海を越えてこなければなりません。たどり着きにくい、ということ。それは、この島が世界から少しだけ隔てられている、ということです。騒がしさから。速さから。目まぐるしい日常から。
だからこそ、この島には、この島だけの時間が流れています。荒波を越えてたどり着いた人々が暮らし、自然と向き合いながら育んできた文化があります。
滑走路の先には、海が広がっています。あの海の上を、今日もあなたを運んだ風が吹いています。

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