越後妻有の物で 作られた人工衛星。 なぜ、衛星?

大地の芸術祭を訪れたあなたを出迎えるのは、エントランスにある33個のサテライト=人工衛星。作者はこの土地を訪れたときに感じた「東京と越後妻有」の関係性を「地球と人工衛星」になぞらえた。

なぜ、越後妻有=人工衛星なのか。しかも、この作品ではひとつひとつの衛星が、古い農具や生活道具など現在は使われなくなった物を集めて作られている。このことは何を意味しているのか。それは、こういう話かもしれない。

宇宙で役目を終えた人工衛星は回収されることなく、永遠に地球のまわりに在り続けている。地球には届かないメッセージを今なお発信し続けている。そして、それらの「ゴースト・サテライト」同士がお互いにメッセージを送受信して、新しい関係性が生まれているかもしれない。

越後妻有もまた東京のまわりに存在する。そして、メッセージを発信し続けている。地方同士で新しいネットワークを築きはじめてもいる。そうして、地方の新しい可能性を問い続けること。これは大地の芸術祭のひとつのテーマでもある。

この作品は大地の芸術祭の入口であるこの場所で、それを体現しているのかもしれない。

そして、アートはあなたに問いかける。

あなたの町と 越後妻有。 その違いは何だろう。

新潟県の南端にあたり、厳しい山々に囲まれた日本有数の豪雪地帯。東京23区より広い面積760㎢に、東京23区の約130分の1にあたる約65,000人※が暮らしている。65歳以上が人口の3割以上を占め、過疎高齢化が進んでいる地域でもある。

はじめてこの地を訪れたあなたは、自分が住んでいる町と比べてどのように感じただろうか。

多くの人にとっては「地方」と呼ばれる場所かもしれない。しかし、地方だからこそ、中央が失くした記憶や知恵が残っている。ただ残っているだけじゃない。残されたものを生かして、都市とは別の方向性で何かしらの進化を続けているのだ。

あなたもこの旅で、越後妻有の物を拾い集めたこの作品のように、その「何か」を拾い集めてみてほしい。

※2017年2月

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