ふたつのトリックを 見破れるだろうか?

まずは、トンネルの奥に向かって歩いてみてほしい。
想像していたトンネルの奥行きに比べて、どう感じただろうか。思っていたより短い。そう感じたのではないだろうか。あるいは、その遠近法によって奥に進むにつれて自分の身体が大きくなったように感じる人もいるかもしれない。これが第一のトリック。

そして、トンネルの外に出てあらためて外観を観察してほしい。
これは豪雪地帯で見られる「かまぼこ型倉庫」と呼ばれるもの。トンネルと見せかけて実は倉庫。これが第二のトリック。

ふたつのトリックアートは、ぼくたちが見ているものが、その通りだとは限らないということを教えてくれる。
作者のエルリッヒは人間の錯覚を利用した親しみやすい作品が多い。金沢21世紀美術館の「スイミング・プール」も彼の作品だ。

そして、アートはあなたに問いかける

ふだん目で 見ているものを、 どこまで 認識しているのか?

「トンネル」と「かまぼこ型倉庫」。

あなたはこの土地を知るための、ふたつのカギを手に入れた。大地の芸術祭の作品を見てまわることは、越後妻有を旅することでもある。この先、あなたは旅の途中で「トンネル」や「かまぼこ型倉庫」を見つけて歓声をあげるだろう。そして、その数の多さに驚くかもしれない。

しかし、この場所でこの作品に触れていなかったとしたらどうだろうか。

人は自分が思っている以上に見たいものだけを見ている。見える情報を無意識のうちにそぎ落としている。毎日歩いている町でも人に言われるまで気づかなかった店があったりするのはそのためだ。

あなたはこの作品によって越後妻有を知るカギとなるキーワードを認識した。これによって、見逃していたかもしれないものに気づけるようになる。それもまたエルリッヒが仕掛けた第三のトリックなのかもしれない。

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