彫刻と台座は同じ木。 その対比が 意味するのは?

この作品は、越後妻有に実際にある樹木をならべた植物図鑑である。

越後妻有は土地の6割が森林であり、ブナなどの原生林が残る一方で、カエデなどの二次林も多い。作者は森林から多種多様な木々を集めて彫刻したあと、それを燃やして炭化させた。そして、その黒い彫刻を、もとの木の上に置いたのだ。

つまり、台座と彫刻は同じ木でできている。

これらは対比の関係にあるのではないだろうか。それぞれの木々の個性が見える台座にくらべて、黒い彫刻はどれも同じに見える。彫刻のかたちが異なるにも関わらず、均質化してしまったように映るのだ。

原生林だった森林は、人の手がはいることで伐採や火災がもたらされる。そのあとに再生した森林を二次林と呼ぶ。原生林と二次林は、人の目には同じ森に見えても、その生態系はどうだろう。越後妻有の森林もまた、その多様性は均質化に向かって進んでいるのかもしれない。

しばし、越後妻有の森の中を散策している気持ちになって歩いてほしい。

そして、アートはあなたに問いかける。

豪雨、豪雪に見舞われてきた越後妻有。 自然を受けいれるとは どういう意味なのか?

越後妻有を含む日本海側は、地球上で最も早くからブナなどの落葉広葉樹林が発達したと言われている。その落葉広葉樹林は、葉を落とすことで腐葉土を生み、その土にたっぷりと水を溜めこむことで豊かな生態系を育んできた。

落葉広葉樹林もまた雨に育てられてきた。この土地は、大陸からの季節風が日本海の水蒸気を吸いあげて雨雲となり、背後にある山脈にぶつかることで大量の雨が降る。越後妻有が水害や豪雪に見舞われるのはそれが理由だが、しかし、その雨雪がまた栄養のある土壌をつくり、豊かな山菜や美味しいお米をもたらすのだ。

人間にとっては過酷な環境でも、めぐりめぐって豊かな土地になる。そして人間もまたそれを受けいれることで生活を豊かにしてきた。越後妻有にはその痕跡がさまざまなかたちで残されている。この旅を通して、あなたも探してみてほしい。

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